2017年5月29日月曜日

南北の「経済取引」は双方に利益/文在寅政権の対北政策③

――悪化している南北問題の解決へ向け、優先順位があるとすれば、まず何から手を付けるべきだと?

■盧武鉉政権引き継ぎ、経済協力再開
盧武鉉政権時代に進めたものがあるのでそこからまた、始めればいいのです。経済協力プランはすべて合意済みです。

当時、どういう内容が入っていたかというと、北は軍事安保の面で非常に重要な軍港である海州までも開放することになっていました。そして経済協力団地をつくる。東海岸側では軍港の安辺<訳注:元山市近くにあり、江原道に属する>に韓国の造船団地が入っていく経済協力案が話し合われていました。

<訳注:200710月の南北首脳(盧武鉉―金正日)会談で出された「南北関係発展と平和繁栄のための宣言」(「104宣言」)は第5項で経済協力をうたい、そこには、海州地域や周辺海域一帯の共同利用▽開城工業地区の第2段階開発▽汶山(韓国)―鳳東(北朝鮮)間の鉄道貨物輸送▽安辺と南浦での造船団地建設――といった具体的なプランが盛り込まれていた>

青瓦台のホームページから

そうなると韓国には大変なチャンスです。もちろん、北としても助かる。私はもう今となっては経済協力とか支援という言い方は適切でないと思っています。いうならば、取引です。経済取引。たぶんに南北は(民族)内部取引方式のFTA(自由貿易協定)のようなものを結ばないといけないかもしれません。

このように経済取引をすれば、韓国企業が北に進出していってSOC(社会資本)の公式事業に参入するようになる。そのあとで開城工業団地のように北の地に韓国が進出していくというわけです。あちこちに企業進出を増やし、北の核問題解決と同時並行で進めていくなら、これ以上にいい安保、それよりもいい経済活動はどこにあるでしょうか。

■南に、北から通勤可能な工業団地
――北の労働者が開城工業団地ではなく、労働力不足の韓国側に来てカネを稼いでいく、といったことも考えられるのではないでしょうか?

十分にあり得るでしょう。開城工団のようなものを非武装地帯のすぐ南側につくることもできるでしょう。それは、私がすでに前回の大統領選で公約として掲げていたことです。

たとえば、江原道高城や京畿道坡州、そのようなところならいくらでも北の労働者にとって通勤可能な工業団地をつくることができます。有事のさい、開城工団で韓国の勤労者が人質にならないか、という不安があるというなら、逆にそのような発想もしてみることができるでしょう。

■非武装地帯で共同研究
――非武装地帯内に南北の共同研究所のようなものをつくったらどうでしょうか? 種子研究とか植物標本研究所、農業技術共同研究所、バイオ研究所のようなものがあれば、技術支援や学術研究もできます。

いくらでも可能です。たとえば山火事が起きたりすれば、南へ北へと火が広がるわけではないですか。38度線が火災を防いでくれるわけではありません。山火事についての共同協約も基本的には必要なことです。

やらなければならないことがあまりにも多い。盧武鉉政権の時にはそのようなことがとても活発でした。たとえば松くい虫の共同防除など、南北でいっしょにやらなければならないことは数えきれないほど多い。北で深刻な肺結核問題も彼らだけの問題ではありません。人道的にみてもそうだし、南への伝染を予防するうえからもぜひとも必要な支援事業です。

■韓国の方により大きな利益
――北朝鮮の存在を認めてやるべきだ、というのが基本的な考えでしょうか?

当然です。北はすでに国際法的には国連に韓国と同時加入した国家です。いつかは統一しなければなりませんが。それで、この間、太陽政策とか、支援、協力…そういうふうに表現してきたのですが、保守的な人たちには「ばらまき」という誤解を呼び起こしました。北の体制の存続を助けるとか、甚だしくはそれが核開発に利用されるとまで言う人たちもいます。

しかし、北を経済協力の対象としてみるなら、まったく別の解釈ができます。韓国は資本力や技術力で優位にあり、それが低廉で質のいい労働力と結びつくのだから、当然、北が得る利益よりは韓国の方がずっと大きいことになります。

開城工団だけをとっても、北の労働者たちが賃金として得る利益の数十倍以上の利益を韓国側が得ます。韓国企業はそれと関連した逆流効果まで得るからです。南北関係は韓国経済のための取引という観点から見るとき、非常に重要です。

■中国でなく、韓国に依存する北朝鮮に
もうひとつは、北に市場経済を伝え、韓国に依存させるようにすることです。そうしてこそ平和統一ができる。太陽政策が追求してきたのはそのようなことでした。北で市場経済を普及させ、北を中国でなく、韓国に依存させるようにもっていかないといけません。

実際、金大中・盧武鉉政権では相当な進展がありました。しかし、李明博・朴槿恵政権がそのすべてを絶ち切ってしまい、北を中国依存の方向へ押しやってしまいました。

いま、北に急変事態が起こったとして、北はどこに助けを求めるでしょうか。中国に頼り、中国にSOSを発するでしょう。北に親中政権ができた場合、韓国はその急変事態をどうやって民主平和統一に生かせるというのでしょうか? むしろ、しだいに統一から遠のくことでしょう。北朝鮮の核問題もそのような観点から解決していかないといけません。

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