2017年5月25日木曜日

安保面でも金大中・盧武鉉政権はすぐれていた/文在寅政権の対北政策②

――この10年、南北はほとんど断絶状態でした。南北交流の面で、朴槿恵、李明博両政権をどう評価されますか。

■李明博・朴槿恵政権で経済生活悪化
私は講演するさい、とくに力を入れて説明していることがあります。朴槿恵政権は過去の金大中・盧武鉉政権と比べ、経済、そして安保の面でも無能だということです。金大中・盧武鉉政権と李明博・朴槿恵政権の経済成績を比べると、すべての指標で金大中・盧武鉉時代の方がすぐれています。
 

大統領選投票を翌日に控えた58日夜、ソウル光化門広場に現れた文在寅候補。
若者たちの支持が当選への大きな原動力になった=韓国カトリック大生の姜明錫君写す

 株価指数や雇用率、失業率はもとより、経済成長率、所得増加率、輸出増加率など、どの指標をとっても金大中・盧武鉉政権の方がよかった。李明博・朴槿恵政権時代は惨憺たる状況で、国民生活は苦しくなった。いちいち説明しなくてもそこは国民もほぼ共感できていると思います。

■南北関係も破綻
ところで、安保、国家観、愛国心…そういう点で依然としてまだ、セヌリ党の方がどこかよさそうだ、何か確実なようだ、という固定観念を持っている人たちがいます。それで、ともすると従北といったような安保パラダイムを持ち出すのです。

<訳注:「セヌリ党」は、朴槿恵政権の与党で、いまの自由韓国党の前身。「従北」は、北朝鮮の言いなりになるといった意味。韓国の保守勢力が「親北派」を見下すニュアンスで使うことが多い>

私はもう、安保についても正面から勝負をすべきだと思っています。安保面も一つひとつ比べてみせれば、金大中・盧武鉉政権の方が李明博・朴槿恵政権より数段よかったということを誰もが認めるでしょう。

実際、結果を見れば分かることです。いまの南北関係は破綻して深刻な状況にあり、私たちは戦争を心配するような状況になってしまっています。

■軍隊経験のない安保無能・非愛国勢力
安保の分野でもわが民主党は今はもう防御的であったり、守勢的であったりせずに、もっと能動的、攻勢的に出るべきです。実際、セヌリ党をはじめ朴槿恵政権は「安保無能勢力」、さらに言えば「非愛国勢力」です。

軍隊にもほとんど行っていない勢力です。そういう彼らがともすると、反共か容共かといったような理念論、従北論にいく。

安保に無能かどうか、比べて見れば分かることです。金大中政権時代には2度にわたる海戦があったが、北側の方により大きな被害を与え、撃退しました。「延坪海戦」を見た人はよく分かるでしょう。金大中政権はNLLを鉄桶のごとく守り抜きました。NLLより南へ、北は一歩たりとも来られなかったのです。

<訳注:「延坪海戦」は、黄海の延坪島付近で起きた南北艦艇の銃撃戦。19996月と20026月、金大中政権下で2度発生し、いずれも韓国軍優位に推移した。「NLL」は、朝鮮戦争休戦協定調印後の19538月、国連軍司令部が黄海上に南北の境界線として一方的に引いた北方限界線のこと。北朝鮮側はこれを認めずに別の境界線を主張、これがこの海域における軍事衝突の背景にある>

■盧武鉉政権では予防安保
盧武鉉政権の時は南北間に軍事衝突は一件もありませんでした。軍事衝突でかけがえのない命を犠牲にした国民や将兵はただの一人もおらず、北はNLLを侵犯しようという試みすらしませんでした。予防的な安保をおこなったからです。

ところで、李明博政権はどうだったでしょうか。天安艦事件や延坪島砲撃事件が起こるなど、NLLは破られ、無力化しました。国民のかけがえのない命が失われた。

<訳注:「天安艦事件」は20103、黄海・白翎島近くのNLL付近を航行していた韓国軍哨戒艦「天安」が爆発して沈没、乗組員46人が犠牲になった。韓国側は北朝鮮の魚雷攻撃を受けて沈没したとの調査結果を発表(北朝鮮側は否定)。「延坪島砲撃事件」は、同年11月、北朝鮮軍が黄海のNLL越しに韓国の大延坪島を砲撃。韓国側で民間人を含む4人が死亡、多数の負傷者が出た>

政府の発表によると、天安艦事件は北の潜水艦が韓国領海に入ってきて白翎島の南にいた韓国の軍艦を爆破して北に戻ったという。まんまとしてやられたというわけです。いまも(北の潜水艦が侵入した)その経路が分からず、政府の発表は国際社会でまともに信用されていません。これで、安保面で有能だといえるのでしょうか。

■国防予算も多かった盧武鉉政権
朴槿恵政権になってからは初めから戦争が心配でした。大統領の口から戦争の話が出ました。ぎくっとします。国民を安心させ、安全を保障するのが安保なのに、完全に失敗したのです。

たとえば、国防予算の増加率は盧武鉉政権の時は年平均9%程度でした。一般予算の増加率よりもずっと高かった。それが李明博政権、朴槿恵政権になってからは5%、4%台に落ちました。

盧武鉉政権のスタート時、国防予算はGDP2.7%でした。盧武鉉政権はそれを3%程度にまで引き上げる目標を立て、2012年には2.9%まで上げました。ところが、李明博・朴槿恵政権と続くなかで2.4%にまで下げてしまった。

盧武鉉政権は国防予算を増やしたことで進歩陣営から大変な非難を受けました。しかし、戦時の作戦指揮権を持ち、自主国防をしなければならないという究極の目標があり、自主国防態勢を整えるためにそれだけ多くの国防予算をつぎ込んだのでした。言ってみれば、国防のための財政努力という面でも金大中・盧武鉉政権の方が数段上だったというわけです。

■犠牲・献身のDNA
金大中・盧武鉉政権の内閣に起用された人たちは過去、民主化闘争で処罰された経歴のために軍隊に行けなかった人を除くと、みな軍服務を体験していました。ところが、李明博・朴槿恵政権を通してみても軍隊に行ってきた国務総理は1人か2人しかいません。

延坪島砲撃事件のとき、青瓦台の「地下バンカー」ということが言われましたが、この言葉も彼らが使ったのでした。盧武鉉政権のときには「状況室」だったのに、それをあえて地下バンカーと表現し、李明博大統領は空軍のジャンパーを着て安保長官会議を開いたのでした。

その会議出席者のうち、まともに軍隊に行ってきたのは陸士出身の国防長官一人だけでした。大統領、国務総理、秘書室長、国情院長…みな、ずらりと軍に行っていない人たちでした。

そのような人たちにどのような愛国心があり、どんな国家観があるというのでしょうか。国家に対する義務は反則で逃れ、特権は享受しようという人たちなのです。

安保の面でも、国家観、愛国心の面でも比べられないほど金大中・盧武鉉政権の方がすぐれていました。私たちは国家と民族のために民主化運動をして拘束されもし、学校を除籍されたり、職場を追われたりもしました。

私たちには国のために犠牲になり、献身するDNAのようなものが体内にあります。しかし、彼らにはそのようなものはなかったのです。

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