2017年6月8日木曜日

北との対話進めて朝鮮半島問題を主導/文在寅政権の対北政策⑥

――韓日の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を再検討し、国会批准のような手続きを考えるべきだと?

GSOMIAを再検討
協定の有効期限は1年で、毎年延長しなければなりません。十分再検討できると思います。「国会で十分に説明したあとで協定を結ぶ」という約束を国防省は守っていない、独島(竹島)や慰安婦問題についての国民感情を考慮していない、そして、この協定が「韓米日」対「朝中ロ」という対立構図を固定化する――といった点で問題があります。
67日、雇用問題に関連して消防署を訪問=青瓦台HPより

北と対話することによって朝鮮半島の問題を韓国が主導することの方が先決です。GSOMIAはそうした土台のうえに論議できる問題です。

<訳注:GSOMIAによると、この協定は1年間効力を有し、一方の締約国政府が他方の締約国政府に対しこの協定を終了させる意思を90日前に外交上の経路を通じて書面により通告しない限り、その効力は、毎年自動的に延長される――などとなっている。詳細は、外務省HP参照 http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000205832.pdf

GSOMIAは相互に情報を交換し合うためのものです。韓国が日本から北の核に関してレベルの高い情報を受け取ることができるというなら、その部分では助かる面はあります。しかし、米国や日本が韓国にいったいどれほどのレベルの情報をくれるかという問題があります。

韓国がレベルの高い情報を与えることができなければ彼らもいい情報はくれません。韓国が北と対話をして朝鮮半島の問題を主導していくとき、外交的にも米国、日本からそれに見合った待遇を受け、情報を交換するに際しても彼らはずっと精密で高度な情報をより早く提供するようになります。

――重要、かつ中国との関係も絡んで難解な問題なので、いまいちど、お尋ねします。THAAD(サード)についての考えは変わりませんか?

THAADは得失を考えて
その問題に関しても同じことが言えます。THAADは配備することもできるでしょう。しかし、朝鮮半島の問題は韓国が主導していかなければならないという立場に立てば、それを配備するに当たっての得失について具体的に検討するべきなのです。

配備するにしても、その手続きやプロセスは正当かつ透明でなければなりません。国会の批准を経なければならないだけでなく、北朝鮮がいまのように引き続き核実験をし、ミサイル搭載技術を高度化していくならば、韓米の同盟関係を強固にするうえからもTHAAD配備は十分に考慮できるという立場を中国に対して強調すべきです。

北朝鮮がすぐに核廃棄とまではいかないまでも核凍結、つまり追加的な核実験をしないよう中国が一定の役割をしてほしい、そうでなければ私たちとしてもやむを得ない、といった具合に外交努力をしていく必要があります。

そうすれば、他の解決策を講じることもでき、仮にTHAAD配備の方向にいくにしても中国が韓国に経済制裁をする名分がなくなります。

韓国の国防省が米国から要請されたことがない、協議したことも決定したこともない、と言っていながら、ある日突然、不意打ちを食らったような形でTHAAD配備が正式なものになるというのは外交、安保の面からみて完全に失敗だったといえましょう。

■協議のための圧迫
――李明博政権以降、対北政策はほとんど断絶的といえるものでした。米国は北の核問題では強硬一辺倒のトランプ政権です。トランプ政権内には核問題を解決するには北の政権が替わらなければ、とする見方もあります。朝鮮戦争は休戦中ですが、南北間の終戦協定や、米朝間の平和協定は必要なのでしょうか。

元もと米国の対北政策には選択可能なものとしてそのようなものが含まれています。北の核は局限的な軍事攻撃をしてでも根源から破壊すべきだ▽北の政権を交替させなければならない▽北の社会自体を民主化して反体制運動を支援しよう▽北との対話を通して外交的に解決しよう――といった多様な選択肢があります。

米国で言う北の核に対する局限的な軍事攻撃が、そのまま米国の対北政策というわけではありません。米国がそうしたふうにしているのは選択可能なオプションを示すことで北を圧迫しようとしているのです。

国際的な制裁も同じことです。結局、そのような圧迫を加え、最後は協議で解決しようというのです。局限的な軍事攻撃にしろ、国際的な圧迫や体制転覆の試みにしろ、結局のところ、協議をするうえで優位に立ち、問題を解決していこうということなのです。

■韓国を置いてけぼりで米朝協議
ところ、韓国政府はまるでオウム返しのように北の核廃棄なくして対話はない、と繰り返すだけです。外交もなく、策略もなく、国家経営戦略もないのです。

韓国政府は米国が常に韓国の立場に立って一緒にやってくれるものと信じているのですが、米国は北との間で対話の窓口を開いているではないですか。

米朝は昨年10月にもいわゆる「セカンドトラック」の会談をしました。北朝鮮は韓成烈外務次官や国連駐在次席大使ら現職の官吏です。米国は民間人ではありますが、ロバート・ガルーチ元国務省朝鮮半島核問題担当大使や6者協議の元次席代表ら非常に重みのある人たちでした。

民間レベルのセカンドトラックといいつつ、実際には準公式会談ともいえるものでした。すぐに公式会談に移行していく可能性があります。

韓国は朝鮮半島問題の主人公なのに、いつの間にか部外者になってしまい、見物人になってしまっている。むしろ、米国と北とで朝鮮半島の問題を話し合うように韓国の方で仕向けている。そんな愚かな選択を朴槿恵政権はしてきたのです。

2017年6月5日月曜日

平和のためなら地獄へでも…/文在寅政権の対北政策⑤

今回の大統領選を前に今年1月、ソウルで出版された『大韓民国は問う――まったく新しい国、文在寅は答える』の抄訳を続ける。

――こんどの大統領選挙で相手が「従北」とか「アカ」といったデマを流す場合、どのように対処するつもりですか? 大統領になったら(米国よりも先に)まず北朝鮮へ行くという発言が意に反し、憂慮すべきこととして受け止められているのも事実です。

人虎を成す
韓非子に「三人成虎」(三人虎を成す)というのがあります。3人がトラが出たと言えば、本当のことになるという意味です。根拠のないウソも何度も聞いているうちに真に受けるようになってしまう。
531日、李洛淵総理に任命状を授与する文在寅大統領=青瓦台HPより

しかし今はもう国民には私の真の安保観について理解していただけると思います。判断力のある方なら、(反共か容共か、といった)よこしまな理念論や亡国的な従北宣伝にはもうだまされません。

軍隊へ行くのを避け、防衛産業に絡んだ不正を働き、銃弾が貫通する防弾服で兵士の生命を売ること、そして悪意をもって国民を分断する――それこそが従北です。

<訳注:韓国の成人男性には兵役義務が課せられているが、不正な兵役逃れが後を絶たない。軍と業者の癒着も根深く、韓国メディアによると、朴槿恵政権下でも、軍幹部が業者から賄賂を受け取り、前線の兵士に「北朝鮮軍の銃弾が貫通する防弾服」を支給していた事件が発覚した>

■「米国か、北か」は悲しい質問
そして、米国か北か、どちらかを選べということ自体、実に悲しい質問です。同時にそれは根源的な問いかけでもあります。朝鮮半島で平和を構築し、北の核問題を解決するためなら、どこであろうと行けないところがあるでしょうか。地獄であったとしても行かなければならないでしょう。
 
ただ、私たちにはその質問に対しては「米国だ」と答えなければならないということがあるようです。本当に悲しいことです。その問いに対する答えが思想検証のようになること、また、その答えが米国でなければならないのではないか、という考えが支配的になっているのも悲しいことです。

米国は韓国にとって長年にわたる友邦であり、親友です。一方、北朝鮮は韓国にとって協議の対象です。核問題を解決することができるなら、また、歴代の政権でなされた南北合意が履行できるような関係に戻るなら、当然、北の方から先に行くべきでしょう。

米国は古くからの友人なので支援も受け、議論もし、戦略も十分に話し合えばいいのです。いま一度強調しますが、核問題を解決し、南北の平和の問題を解決するためなら、そこがどこであろうと行かなければなりません。

■北朝鮮は大陸への出口
――北朝鮮に行って南北の経済協力についても話し合い、風穴を開ける。そう言っていますが、そういう方向が対北基本政策なのですか?

風穴を開けるだけでは足りません。北朝鮮は韓国が大陸に進出していく出口になり得ます。そうなれば、韓国は中国、ロシア、日本、米国とともに東北アジアの平和をつくっていくうえで主導的な役割を果たせます。

――大陸に進出していく出口とはどういう意味でしょうか?

韓国経済は国際経済の沈滞や保護貿易主義などで輸出と内需が限界に達しています。北朝鮮との平和交流は韓国経済の新しい活路です。若い人たちにとってはロシアや中国に出て行くにあたって多くのチャンスが与えられる道でもあります。韓国経済の領域を広げるには北を通って大陸に出ていく以外、ほかに出口はありません。

――北の核問題はデリケートな問題です。(韓国が)北にカネをばらまき、それによって北は核を開発したという考えがいまだにあります。「それなのにまた、まず北に行くというのか…」という不安です。

■悪口だけでは何にもならない
では、北の悪口をいうだけで、核をそのままにしておこうというのでしょうか? 積極的な対策もなく、ただ非難するだけだったので問題を解決できず、北は核を兵器化してしまったのです。

北の核問題にあって、国際協力で制裁をするのは話し合いのテーブルに着かせるためです。究極的には対話と協議なのです。

北はいま、少なくなくとも爆撃機に核を載せて投下できるレベルにまできました。もう少しすれば、ミサイルの弾頭に搭載できるレベルにまで至るとみています。

このように北の核が高度化するまで李明博・朴槿恵政権は何をしていたというのでしょうか。悪口を言っていただけです。悪口を言ったからといって核開発は止まるでしょうか? 

■制裁・圧迫も協議のため
北の核問題を解決しようとするなら、国際的に制裁し、共助し、圧迫もしなければなりません。しかしそうした制裁や圧迫すらも協議のためなのです。

そうした努力はまったくしてみもしないで、ただ拳を振り上げているだけでは何にもなりません。戦争の不安をもたらしただけの李明博・朴槿恵政権の安保政策、北の核に対する無策を批判すべきです。

――トランプ米政権から韓国にTHAAD(サード)を早急に配備すべきだというメッセ―ジがきています。

トランプ政権の外交政策や対北政策がどうであれ、韓国は実用的に対処しなければなりません。李明博・朴槿恵政権が間違ったのは、実用的でなく、理念的だったからです。

韓国社会にいつも(反共か、容共かといった)理念論をけしかけ、理念的に色分けする。それが、保守政権が政権延長のために常用してきた戦略でした。

韓国の国益を考えた実用的なアプローチをしないで理念だけで北をとらえ、相手を完全に打ちのめす対象としてだけ見るのです。朝鮮半島と東北アジアの平和のためにもTHAAD配備の問題は実用的な側面から解決策を見いだすべきです。

2017年6月1日木曜日

THAAD配備は強大国の角逐まねく/文在寅政権の対北政策④

――米軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD/サード)韓国配備が決まり、北はもちろん、中国との関係も相当デリケートな状況になっています。この問題についてはどのように解決していけばいいと?
 
518日、光州民主化運動37周年記念式典で、民主化運動を象徴する歌「あなたのための行進曲」を歌う文在寅大統領ら=青瓦台HP
■痛恨の歴史を繰り返してはならない
いまはもう、米韓がTHAAD配備で合意してしまっているので再度話し合うというのは難しいでしょう。この局面で決して忘れてはならないことがあります。朝鮮半島を取り巻く強大国がわが国をめぐって角逐を繰り広げたことは旧韓末にもあったということです。

<訳注:「旧韓末」とは、朝鮮王朝が末期に国号を大韓帝国(18971910年)と改めた時期のこと>

そこでは、日清戦争、日露戦争など強大国の角逐がこの朝鮮半島を舞台にこの地で起きたのでした。それによって私たちは国権を失うという痛恨の歴史を体験したのです。そのような悲劇は避けなければなりません。

THAAD配備は、朝鮮半島内でいま一度、強大国の角逐を招き得ます。北の核問題への対応を超えて、民族史、文明史といった大きな観点からも見ていかなければなりません。いったい、どうするのが望ましいのか、ということです。

■拙速でなされた韓米合意
何よりもまず、プロセスや手続きがだいじなのに、朴槿恵大統領は一方的に決めてしまったのです。このような問題は国会の批准が必要です。国会で十分に検討して決めるべき問題なのです。

THAAD配備に関する韓米間の合意自体、非常に性急、拙速でなされました。そのような合意がなされる前に広く議論がなされるべきでした。

北の高高度ミサイルに対し、わが朝鮮半島内で効用があるのか、MDとは別個に韓国が追求してきたK-MDで一部機能を代用できるのか、あるいはMD体制に必然的に編入される効果をもたらすのか、といった点を十分に検討すべきでした。

そして次に、これに対する中国側の反発がないのか、これによって中国、ロシア、北朝鮮が結びつき、それと韓米日が対峙することになる外交状況をどう克服するか、そのような多くのことを検討する必要があります。

■効果にも疑問
THAADの効用は米国においてさえも立証されていません。米国のテキサスにTHAADが配備されたというが、実際そこに配備されたわけではない。配備はできず、ただテキサスにあるというだけなのです。十分に検証されていないから…。

そういうことなのですが、ともかく今は韓米間で話し合いをしたのですが、それなりに効果があるとしてもせいぜい北の核問題に対する国民の不安を心理的なレベルで減らしてやれる程度でしょう。また、北を圧迫する効果があるというなら、その程度は認めることもできるでしょう。

しかし、やはり、あらかじめ検討しておかなければならない部分についての検討は是非とも必要です。

■国会の批准が必要
次にTHAAD配備の場所を星山砲台から星州ゴルフ場に移したことで、いまはもう国会の同意を得る必要性がずっと高まりました。

星山砲台の場合は砲台なのでそう大きな財政負担はない。大きな財政負担がないので国会の批准は必要でないという弁明もあり得ましたが、いまはゴルフ場の買い入れ費用だけで少なくとも1千億ウォンはかかります。

そうなると、重大な財政負担を伴う国際間の合意になるわけです。だから、いまとなってはもう国会の批准が必要です。それを避けるために星州ゴルフ場と軍所有の土地を交換する方式をとったとしても、カネか土地かの違いで財政負担は同じことです。いずれにしても、国会の同意を得るプロセスが必要になります。


――金大中・盧武鉉政権が北にカネをばらまき、それを北が核開発に利用した、といった批判がありました。そのことで北の人権問題には目をつぶった、という批判も少なくありません。

■「ばらまき」批判は通じない
そういうふうに世論を駆り立ててきたのです。しかし、いまとなっては過去10年間の政権は、経済はもちろん安保の面でもまったく無能だったということは多くの国民の知るところとなりました。少なくとも2040歳代はそのような主張をまったく信じません。高齢層の一部はそう信じているが、それもほとんどなくなってきています。

そのことは、(反共か容共かといった)理念論のようなものに取り込まれていないのを見るとわかります。国民はもう、そのような考えに絡めとられることはありません。

「共に民主党」はちゃんとした安保政策体系を持っています。10年間対決一辺倒だった李明博・朴槿恵政権の安保面における無能ぶりとは確実に違う政策を示し、説得できる状況になってきています。

 

2017年5月29日月曜日

南北の「経済取引」は双方に利益/文在寅政権の対北政策③

――悪化している南北問題の解決へ向け、優先順位があるとすれば、まず何から手を付けるべきだと?

■盧武鉉政権引き継ぎ、経済協力再開
盧武鉉政権時代に進めたものがあるのでそこからまた、始めればいいのです。経済協力プランはすべて合意済みです。

当時、どういう内容が入っていたかというと、北は軍事安保の面で非常に重要な軍港である海州までも開放することになっていました。そして経済協力団地をつくる。東海岸側では軍港の安辺<訳注:元山市近くにあり、江原道に属する>に韓国の造船団地が入っていく経済協力案が話し合われていました。

<訳注:200710月の南北首脳(盧武鉉―金正日)会談で出された「南北関係発展と平和繁栄のための宣言」(「104宣言」)は第5項で経済協力をうたい、そこには、海州地域や周辺海域一帯の共同利用▽開城工業地区の第2段階開発▽汶山(韓国)―鳳東(北朝鮮)間の鉄道貨物輸送▽安辺と南浦での造船団地建設――といった具体的なプランが盛り込まれていた>

青瓦台のホームページから

そうなると韓国には大変なチャンスです。もちろん、北としても助かる。私はもう今となっては経済協力とか支援という言い方は適切でないと思っています。いうならば、取引です。経済取引。たぶんに南北は(民族)内部取引方式のFTA(自由貿易協定)のようなものを結ばないといけないかもしれません。

このように経済取引をすれば、韓国企業が北に進出していってSOC(社会資本)の公式事業に参入するようになる。そのあとで開城工業団地のように北の地に韓国が進出していくというわけです。あちこちに企業進出を増やし、北の核問題解決と同時並行で進めていくなら、これ以上にいい安保、それよりもいい経済活動はどこにあるでしょうか。

■南に、北から通勤可能な工業団地
――北の労働者が開城工業団地ではなく、労働力不足の韓国側に来てカネを稼いでいく、といったことも考えられるのではないでしょうか?

十分にあり得るでしょう。開城工団のようなものを非武装地帯のすぐ南側につくることもできるでしょう。それは、私がすでに前回の大統領選で公約として掲げていたことです。

たとえば、江原道高城や京畿道坡州、そのようなところならいくらでも北の労働者にとって通勤可能な工業団地をつくることができます。有事のさい、開城工団で韓国の勤労者が人質にならないか、という不安があるというなら、逆にそのような発想もしてみることができるでしょう。

■非武装地帯で共同研究
――非武装地帯内に南北の共同研究所のようなものをつくったらどうでしょうか? 種子研究とか植物標本研究所、農業技術共同研究所、バイオ研究所のようなものがあれば、技術支援や学術研究もできます。

いくらでも可能です。たとえば山火事が起きたりすれば、南へ北へと火が広がるわけではないですか。38度線が火災を防いでくれるわけではありません。山火事についての共同協約も基本的には必要なことです。

やらなければならないことがあまりにも多い。盧武鉉政権の時にはそのようなことがとても活発でした。たとえば松くい虫の共同防除など、南北でいっしょにやらなければならないことは数えきれないほど多い。北で深刻な肺結核問題も彼らだけの問題ではありません。人道的にみてもそうだし、南への伝染を予防するうえからもぜひとも必要な支援事業です。

■韓国の方により大きな利益
――北朝鮮の存在を認めてやるべきだ、というのが基本的な考えでしょうか?

当然です。北はすでに国際法的には国連に韓国と同時加入した国家です。いつかは統一しなければなりませんが。それで、この間、太陽政策とか、支援、協力…そういうふうに表現してきたのですが、保守的な人たちには「ばらまき」という誤解を呼び起こしました。北の体制の存続を助けるとか、甚だしくはそれが核開発に利用されるとまで言う人たちもいます。

しかし、北を経済協力の対象としてみるなら、まったく別の解釈ができます。韓国は資本力や技術力で優位にあり、それが低廉で質のいい労働力と結びつくのだから、当然、北が得る利益よりは韓国の方がずっと大きいことになります。

開城工団だけをとっても、北の労働者たちが賃金として得る利益の数十倍以上の利益を韓国側が得ます。韓国企業はそれと関連した逆流効果まで得るからです。南北関係は韓国経済のための取引という観点から見るとき、非常に重要です。

■中国でなく、韓国に依存する北朝鮮に
もうひとつは、北に市場経済を伝え、韓国に依存させるようにすることです。そうしてこそ平和統一ができる。太陽政策が追求してきたのはそのようなことでした。北で市場経済を普及させ、北を中国でなく、韓国に依存させるようにもっていかないといけません。

実際、金大中・盧武鉉政権では相当な進展がありました。しかし、李明博・朴槿恵政権がそのすべてを絶ち切ってしまい、北を中国依存の方向へ押しやってしまいました。

いま、北に急変事態が起こったとして、北はどこに助けを求めるでしょうか。中国に頼り、中国にSOSを発するでしょう。北に親中政権ができた場合、韓国はその急変事態をどうやって民主平和統一に生かせるというのでしょうか? むしろ、しだいに統一から遠のくことでしょう。北朝鮮の核問題もそのような観点から解決していかないといけません。

2017年5月25日木曜日

安保面でも金大中・盧武鉉政権はすぐれていた/文在寅政権の対北政策②

――この10年、南北はほとんど断絶状態でした。南北交流の面で、朴槿恵、李明博両政権をどう評価されますか。

■李明博・朴槿恵政権で経済生活悪化
私は講演するさい、とくに力を入れて説明していることがあります。朴槿恵政権は過去の金大中・盧武鉉政権と比べ、経済、そして安保の面でも無能だということです。金大中・盧武鉉政権と李明博・朴槿恵政権の経済成績を比べると、すべての指標で金大中・盧武鉉時代の方がすぐれています。
 

大統領選投票を翌日に控えた58日夜、ソウル光化門広場に現れた文在寅候補。
若者たちの支持が当選への大きな原動力になった=韓国カトリック大生の姜明錫君写す

 株価指数や雇用率、失業率はもとより、経済成長率、所得増加率、輸出増加率など、どの指標をとっても金大中・盧武鉉政権の方がよかった。李明博・朴槿恵政権時代は惨憺たる状況で、国民生活は苦しくなった。いちいち説明しなくてもそこは国民もほぼ共感できていると思います。

■南北関係も破綻
ところで、安保、国家観、愛国心…そういう点で依然としてまだ、セヌリ党の方がどこかよさそうだ、何か確実なようだ、という固定観念を持っている人たちがいます。それで、ともすると従北といったような安保パラダイムを持ち出すのです。

<訳注:「セヌリ党」は、朴槿恵政権の与党で、いまの自由韓国党の前身。「従北」は、北朝鮮の言いなりになるといった意味。韓国の保守勢力が「親北派」を見下すニュアンスで使うことが多い>

私はもう、安保についても正面から勝負をすべきだと思っています。安保面も一つひとつ比べてみせれば、金大中・盧武鉉政権の方が李明博・朴槿恵政権より数段よかったということを誰もが認めるでしょう。

実際、結果を見れば分かることです。いまの南北関係は破綻して深刻な状況にあり、私たちは戦争を心配するような状況になってしまっています。

■軍隊経験のない安保無能・非愛国勢力
安保の分野でもわが民主党は今はもう防御的であったり、守勢的であったりせずに、もっと能動的、攻勢的に出るべきです。実際、セヌリ党をはじめ朴槿恵政権は「安保無能勢力」、さらに言えば「非愛国勢力」です。

軍隊にもほとんど行っていない勢力です。そういう彼らがともすると、反共か容共かといったような理念論、従北論にいく。

安保に無能かどうか、比べて見れば分かることです。金大中政権時代には2度にわたる海戦があったが、北側の方により大きな被害を与え、撃退しました。「延坪海戦」を見た人はよく分かるでしょう。金大中政権はNLLを鉄桶のごとく守り抜きました。NLLより南へ、北は一歩たりとも来られなかったのです。

<訳注:「延坪海戦」は、黄海の延坪島付近で起きた南北艦艇の銃撃戦。19996月と20026月、金大中政権下で2度発生し、いずれも韓国軍優位に推移した。「NLL」は、朝鮮戦争休戦協定調印後の19538月、国連軍司令部が黄海上に南北の境界線として一方的に引いた北方限界線のこと。北朝鮮側はこれを認めずに別の境界線を主張、これがこの海域における軍事衝突の背景にある>

■盧武鉉政権では予防安保
盧武鉉政権の時は南北間に軍事衝突は一件もありませんでした。軍事衝突でかけがえのない命を犠牲にした国民や将兵はただの一人もおらず、北はNLLを侵犯しようという試みすらしませんでした。予防的な安保をおこなったからです。

ところで、李明博政権はどうだったでしょうか。天安艦事件や延坪島砲撃事件が起こるなど、NLLは破られ、無力化しました。国民のかけがえのない命が失われた。

<訳注:「天安艦事件」は20103、黄海・白翎島近くのNLL付近を航行していた韓国軍哨戒艦「天安」が爆発して沈没、乗組員46人が犠牲になった。韓国側は北朝鮮の魚雷攻撃を受けて沈没したとの調査結果を発表(北朝鮮側は否定)。「延坪島砲撃事件」は、同年11月、北朝鮮軍が黄海のNLL越しに韓国の大延坪島を砲撃。韓国側で民間人を含む4人が死亡、多数の負傷者が出た>

政府の発表によると、天安艦事件は北の潜水艦が韓国領海に入ってきて白翎島の南にいた韓国の軍艦を爆破して北に戻ったという。まんまとしてやられたというわけです。いまも(北の潜水艦が侵入した)その経路が分からず、政府の発表は国際社会でまともに信用されていません。これで、安保面で有能だといえるのでしょうか。

■国防予算も多かった盧武鉉政権
朴槿恵政権になってからは初めから戦争が心配でした。大統領の口から戦争の話が出ました。ぎくっとします。国民を安心させ、安全を保障するのが安保なのに、完全に失敗したのです。

たとえば、国防予算の増加率は盧武鉉政権の時は年平均9%程度でした。一般予算の増加率よりもずっと高かった。それが李明博政権、朴槿恵政権になってからは5%、4%台に落ちました。

盧武鉉政権のスタート時、国防予算はGDP2.7%でした。盧武鉉政権はそれを3%程度にまで引き上げる目標を立て、2012年には2.9%まで上げました。ところが、李明博・朴槿恵政権と続くなかで2.4%にまで下げてしまった。

盧武鉉政権は国防予算を増やしたことで進歩陣営から大変な非難を受けました。しかし、戦時の作戦指揮権を持ち、自主国防をしなければならないという究極の目標があり、自主国防態勢を整えるためにそれだけ多くの国防予算をつぎ込んだのでした。言ってみれば、国防のための財政努力という面でも金大中・盧武鉉政権の方が数段上だったというわけです。

■犠牲・献身のDNA
金大中・盧武鉉政権の内閣に起用された人たちは過去、民主化闘争で処罰された経歴のために軍隊に行けなかった人を除くと、みな軍服務を体験していました。ところが、李明博・朴槿恵政権を通してみても軍隊に行ってきた国務総理は1人か2人しかいません。

延坪島砲撃事件のとき、青瓦台の「地下バンカー」ということが言われましたが、この言葉も彼らが使ったのでした。盧武鉉政権のときには「状況室」だったのに、それをあえて地下バンカーと表現し、李明博大統領は空軍のジャンパーを着て安保長官会議を開いたのでした。

その会議出席者のうち、まともに軍隊に行ってきたのは陸士出身の国防長官一人だけでした。大統領、国務総理、秘書室長、国情院長…みな、ずらりと軍に行っていない人たちでした。

そのような人たちにどのような愛国心があり、どんな国家観があるというのでしょうか。国家に対する義務は反則で逃れ、特権は享受しようという人たちなのです。

安保の面でも、国家観、愛国心の面でも比べられないほど金大中・盧武鉉政権の方がすぐれていました。私たちは国家と民族のために民主化運動をして拘束されもし、学校を除籍されたり、職場を追われたりもしました。

私たちには国のために犠牲になり、献身するDNAのようなものが体内にあります。しかし、彼らにはそのようなものはなかったのです。

2017年5月22日月曜日

南北関係はどうなる/文在寅政権の対北政策


韓国の文在寅(ムン・ジェイン)新政権はまずは順調なスタートを切りつつあるようだ。文在寅大統領はこの先、どのような政策を進めるのか。とりわけ気になるのは北東アジア情勢に直結するその対北政策、南北関係だ。

文在寅氏は今年1月ソウルで出版された本の中で諸政策についてかなり詳しく語っていた。『大韓民国は問う――まったく新しい国、文在寅は答える』と題した作家・文亨烈氏との対談本である。今回の大統領選に向けた公約の性格を帯びたものだったが、そこでは対北政策の基本哲学といったものについても語っている。目についた部分を抄訳し、その対北政策を占うよすがとしたい。(波佐場 清)

文亨烈 朝鮮半島は休戦状態で、北朝鮮の核問題で常に緊張状態にあります。南北対話や統一に関しどのような構想を描いていますか。南北間に和解と平和の風穴を開けるにはどうしたらいいと考えますか?

■まずは経済分野の統一から
文在寅 いったん、統一の過程を2段階に分けて考えてみることができます。まず、経済分野で統一を達成することです。経済分野の統一は韓国経済を回復させる道であり、韓国経済の新しい突破口にもなります。

<訳注:「統一は経済の分野から」とする考えは、韓国民主化後の盧泰愚政権(198893年)以来、歴代政権が掲げてきた「民族共同体統一案」に沿ったものだ。それはヨーロッパ統合構想と重ね合わせて考えると分かりやすい。

ヨーロッパの統合は、

ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体/1952年設立)→EEC(欧州経済共同体/58年)、EURATOM(欧州原子力共同体/58年)→EC(欧州共同体/67年)→EU(欧州連合/93年)

という過程を経て進展してきた。まずは経済の統合から入り、いまの連合(EU)段階にまで進んできたわけである。実現の可能性はともかくも、ゆくゆくは政治の統合も、というのがヨーロッパ統合の理念だった。

韓国の統一構想はこれをモデルに、南北でまず経済共同体をつくり、それを社会や文化の共同体にまで広げて一つの共同生活圏にし、実質的な統一状態をつくることを当面の目標としている。そうした過程を制度化し、平和的に管理するための南北連合をつくろうというのがこの構想の核心といえる。


大統領選投票を翌日に控えた58日夜、文在寅候補がソウルの光化門広場で最後の訴え
=韓国カトリック大生、姜明錫君写す
 
 

過去、金大中政権(19982003年)と盧武鉉政権(200308年)は、この構想を下敷きに対北和解協力政策を推進。続く李明博政権(0813年)と朴槿恵政権(1317年)は北の核問題解決を前提にした形の「核連携戦略」をとったことで南北関係はいま、断絶状態に陥っている。

文在寅政権は金大中・盧武鉉政権を引き継ぎ、核問題解決と和解協力の「並行戦略」で対北関係を打開し、南北の経済協力を積極的に進めようとしているとみられる>

■「鉄のシルクロード」推進
先ごろ、ロシアが日本に鉄道の連結を提案したが、それを見て胸が塞がるような思いでした。

<訳注:例えば2016103日の「産経ニュース」は、日本とロシアの経済協力に関し、ロシア側がシベリア鉄道を延伸し、サハリンから北海道までをつなぐ大陸横断鉄道の建設を求めていることが分かった――と報じた。 http://www.sankei.com/politics/news/161003/plt1610030005-n1.html

それは韓国の夢だからです。韓国の鉄道が北朝鮮を通ってシベリア鉄道とつながり、シベリア鉄道が中国の鉄道とつながって大陸、さらにその先のヨーロッパにまで行くルート。金大中大統領が言っていた「鉄のシルクロード」を推進してきていたが、李明博政権になって中断してしまった。

朴槿恵大統領も口では言ったが、何もしませんでした。鉄道だけではありません。鉄道を繋ぐことができれば、ガス管をシベリアから北経由で南まで延伸できます。

■モンゴルで太陽光・風力発電
さらに、モンゴルに大規模な太陽光や風力の発電所ができれば、それをアジアのシルクロードから北を経て韓国に持ってくることもできる。無窮無尽の経済領域が生まれることになるのです。そのようなチャンスを有する国は韓国以外にありません。

ところが、日本とロシアが鉄道を繋ぐことになれば、韓国は大陸に出ていく機会と通路を失ってしまうことになる。南北で経済の統一がなされれば、8千万人の内需市場を持つことになり、それだけでも相当に成長潜在力を高めることができます。

そうなると、米国、中国、ドイツ、日本に次ぐくらいの経済大国になるか、場合によっては日本を追い越すだろうという世界の研究機関の展望もあります。このように、経済統一がなされると、次はいつになるかは分からないとはいえ、政治・軍事面の統一の道がおのずと開けると見ています。小さな水滴が岩をも穿つように、ということです。(つづく)