韓国の文在寅政権を支える進歩系与党「共に民主党」は10月10日、来年3月におこなわれる次期大統領選挙の党公認候補として李在明・京畿道知事(56)を選んだ。李知事は候補受諾演説で「民生重視」の姿勢を示し、「改革」への強い意思を表明した。以下に、演説の主要部分を訳出した。見出しは訳者が付けた。 (波佐場 清)
■中学、高校へも行けず…
「大韓民国は民主共和国である」「大韓民国の主権は国民に在り、あらゆる権力は国民から出てくる」
そうです。大韓民国憲法第1条で明記されたように、国の主人は国民なのです。あらゆる国家権力は国民のために使われなければなりません。政治は、国民がより良く暮らせるために存在すべきなのです。
本日、私たちは「変化」を選択しました。
私は中学、高校もまともに行けませんでした。年齢が幼かったので自分の名前で工場に就職することができず、他人の名前で工場に通いました。プレスに圧されて腕が曲がり、強い薬品で嗅覚を半分以上失った障がい少年労働者でした。政治的なバックも、組織も、学閥も、地縁もありません。国会議員の経歴一つない、辺境のアウトサイダーです。そんな私、李在明に与党の大統領候補という重大な任務を任せていただきました。
■「改革」は国民の命令
「国民の暮らしとかけ離れた旧態依然の政治をやめろ」「既得権の宴会、汝矣島(ヨイド)政治[日本の「永田町政治」に相当=訳者注]を改革しろ」「経済を活性化せよ、民生を優先せよ、国民の暮らしを変えろ」。どれもが切羽詰まった国民の命令です。
本日、私たちは「改革」を、新しさを選択しました。
過去30年余の間、検察、警察、国家情報院、腐敗政治勢力、あらゆる既得権に立ち向かってたたかい、常に勝ち続けてきた私、李在明に民生改革、社会改革、国家改革の完遂という任務を与えてくださいました。
「不公正と不平等、不正腐敗を清算し、公正と正義を取り戻せ」「不労所得をなくし、働く者が尊重され、まともに暮らせる国をつくれ」。これが明確、峻厳な国民の命令です。そんな命令を厳粛に実行します。国民が求める「変化と改革」を必ず完遂します。
HP 李在明の開かれたキャンプ 「共に民主党」の大統領候補に決まった李在明氏 |
私一人ではできないことです。しかし、ここに心強い同志たちがいます。最後まで善意の競争をしてくださった尊敬する李洛淵候補、改革の旗印を高く掲げてくださった秋美愛候補、民主党をさらに若くしてくれた尊敬する朴用鎮候補に心より感謝申し上げます。
■大転換の時代へ、大胆な挑戦
いま、韓国は内外で大きな挑戦に直面しています。
大きな転換の時代です。エネルギー転換、デジタル転換、パンデミック、国家間の無限競争、そして耐え難い不平等と格差、構造的な景気沈滞、すべてがこれまで経験しなかった危機です。
内にあっては、不公正と不平等、不均衡と低成長の悪循環によって競争と葛藤が激化し、社会の連帯が弱まっています。経済は先進国なのに多くの国民が夢と意欲を失い、絶望の奈落にはまり込んでいます。外にあっては、ますます激しくなる国家間の無限競争が私たちに選択できない選択を強いています。
しかし危機にあっても、やろうという者は方法を探し、避けようという者は口実を探します。私、李在明は方法を探します。いままでがそうであったようにピンチをチャンスとして生かします。選択を強要されるのではなく、選択を求めることができるようにしていきます。偉大な国民とともに、偉大な挑戦に大胆に臨んでいきます。
■日本を追い越し、先進国に追いつき…
1.大転換の危機を大跳躍のチャンスとして生かします。気候危機、技術革命、世界的な感染病に最もうまく対応してきた韓国です。だから日本を追い越し、先進国に追いつき、遂には世界をリードする、そんな韓国をつくります。
2.国家主導の強力な経済復興政策によって経済成長を右肩下がりから右肩上がりに変えます。左派の政策で大恐慌に打ち勝った(米国大統領の)ルーズベルトにならいます。経済や民生に、赤い色がどんな関係があるというのですか。有用で効率的なら、進歩・保守、右派・左派、朴正煕の政策、金大中の政策、そこにどんな差があるというのですか。国民の財布を満たし、国民の暮らしを改善できさえすれば、選り好みをせず、果敢に採択して果敢に実行します。
3.積弊を一掃し、公正、正義の国をつくります。積弊は大きなものだけではありません。国民の暮らしを締め付け、公正を害するすべてが積弊です。政治、行政、司法、メディア、財閥、権力機関だけではなく、不動産、採用、教育、徴税、経済、社会、文化など、国民の暮らしにかかわるすべての分野で不公正と不合理をきれいに清算します。
誰もルールに背いて利益を得ることができず、ルールを守ることで損をみることのない国、すべての分野、すべての地域で特別な犠牲には特別な補償が得られる国をつくります。だれかの損失になることが明らかな不労所得を完全に根絶します。
■福祉、文化、平和人権、科学技術
4.国民の基本権が保障される普遍福祉国家を完成させます。韓国はいまや経済の面では先進国です。国家全体で富の総量を大きくすることに加えて国民の基本的な暮らしを保障しなければなりません。世界で最初に基本所得を支給する国、基本住宅、基本金融で基本的な生活を守る国をつくります。国民がより安全で、みんながより平等で、より自由な国をつくります。
5.世界がうらやむ文化強国をつくります。韓流の熱風が世界を席巻しています。韓国の映画、音楽、ゲーム、ドラマに世界が熱狂しています。金九先生の長年の夢だった「ただひたすら持ちたい高い文化の力」をとどろかせています。「支援はするが、干渉はしない」という金大中大統領の哲学で世界がうらやむ「文化強国コリア」をつくります。
6.世界をリードする平和人権国家をつくります。韓国は周辺強国の影響を受ける半島国家でした。葛藤と対決で苦しむ分断国家でした。いまや経済強国、軍事強国を超えて気候危機への対応をリードし、世界の平和と人権を守る先導国家へと進んでいかなければなりません。
7.科学技術の国、未来教育の国をつくります。大転換の時代にふさわしい未来の人材教育が必要です。速い社会経済の発展スピードに相応する生涯教育に国が責任を負わなければなりません。基礎科学技術はもちろん、先端科学技術に積極投資します。技術革命の時代を率いる技術強国へと発展させます。
■世界をリードする韓国へ
恐れが障壁となってはなりません。よその国でやらないということが、韓国がしないという理由にはなりません。
私は偉大な韓国国民を、私たちの危機克服DNAを信じます。第二次世界大戦後、最貧国から世界10位の経済大国にした韓国国民です。IMF危機を最も早く克服し、日本の輸出報復に短期間のうちに完全に勝利した国民です。1980年の光州民主化運動、87年の民主化抗争、1700万人のろうそく革命で世界の民主主義の歴史を書き換えた国民です。ソーシャルディスタンス、自発的な防疫、分別リサイクルまで、社会のために不便を甘受し喜んで参加する偉大な国民です。
このような国民のいる韓国にどんなことであれ、できないことがありましょうか? これまでの世界になかった韓国、世界をリードする韓国、どうしてそんな国をつくれないというのでしょうか。
問題はリーダーです。明確な哲学とビジョン、堅固な勇気と決断力がなければなりません。既得権の抵抗を突破する強力な推進力がなければなりません。国民を信じ、国民と共に、国民のためにいばらの茂みをかき分けて新しい道を切り拓いていく強い意志がなければなりません。
私、李在明はやります。偉大な国民、偉大な党員同志とともに偉大な旅を始めます。
■「頼れる大統領」に
「国民の暮らしを守る頼れる大統領」になります。強者の過度な欲望を抑え、弱者の暮らしを守ります。国民の仕事を守り、所得と福祉を守ります。女性の安全、青年の機会、高齢者の幸福な老後を守ります。どんなことであれ、暮らしを守ること以上に優先される問題はありません。戦争に陥って民生をおろそかにすることは決してありません。「ひたすら国民、ひたすら民生」という信念を守ります。
「国を守る頼れる大統領」になります。周辺強国の覇権競争から韓国を守ります。韓国の自尊と国益を守ります。戦争、災難、疾病、テロなど安保面の危機から韓国社会を守ります。「国民の心を最もよく察し、国民の暮らしに役立つ大統領」になります。「政治が変われば暮らしも変わる」と体感できる変化をもたらします。
「敵と味方を分けない統合大統領」になります。大統領になるまでは一部を代表するが、大統領になった瞬間、全員を代表します。清算のないでたらめなつじつま合わせではなく、公正な秩序の上に、陣営や地域、敵味方を分けず、公平に機会を享受できる大統合の国をつくります。
■「既得権」と対決
大統領選挙まで残り150日です。
こんどの大統領選は腐敗既得権との最後の戦いです。未来と過去の対決、民生改革勢力と旧態依然の既得権カルテルとの対決です。暗い過去に回帰するのか、希望の新しい国に向けて出発するのかを決めなければなりません。
私は実績で実力が検証された「準備のできた大統領」だと自負しています。城南市の成功した民生政策は京畿道の政策となり、京畿道の成功した民生政策は全国へと広がりました。
政治家の公約は国民との契約以上のものです。私は守れる約束だけをし、約束したことは必ず守ってきました。公約実行率平均95%という数字がそれを証明しています。私の有能さは実績で証明されています。取り柄のない私を国民が認めてくれたのもひたすら、なすべきことをうまくやったからだと信じています。
一つ付け加えて申し上げます。土建勢力と癒着した政治勢力の腐敗と不正を必ず根絶します。一瞬なりとも先に延ばすことはありません。当選即強力な「不動産大改革」で不動産不労所得共和国という汚名をなくします。
「開発利益完全国民還元制」の導入はもちろん、城南市と京畿道で行った「建設原価・分譲原価の公開」を積極的に即時拡大します。
こんどの「華川大裕ゲート」ように事業の過程で金品提供など不法行為が摘発されれば、事後であっても開発利益を全額回収して不動産不労所得が少数の既得権者の手に入らないよう、完全に根絶します。
■「4番目の民主政府」実現へ
金九先生の一念、金大中大統領の信念、盧武鉉大統領の熱情、文在寅大統領の心で政治に臨みます。敢えて国民を指導するのではなく従います。もっと有能な民主政府で、もっと公正な社会、もっと成長する国をつくって報います。
私、李在明は来年3月9日、必ず勝利します。そしてその2カ月後に大統領就任式場で尊敬する文在寅大統領と固く手を取り合います。
(亡くなった)金大中、盧武鉉の二方の大統領に「あなたの遺産である4番目の民主政府がスタートしました」と誇らしく報告します。