「日韓関係は過去最悪」と言われるが、そうだろうか。確かに、政府間の関係は良くないが、民間レベルは決してそうではない。人びとの交流は逆に、むしろ増えており、日韓間に新しい潮流が生じている――。
韓国の大阪総領事、吳泰奎(オ・テギュ)さん(59)が最近、本国の日刊紙、京郷新聞にこんな寄稿文を載せた。新聞記者出身で、大阪に赴任してきて1年余。いま、主要20カ国・地域(G20)首脳会談を控える大阪から韓国民に発したメッセージである。
https://news.v.daum.net/v/20190620203726432
吳総領事は「民」から「官」に移った自らの立場に引きつけ、「民間の新しい流れがいっそう大きくなるよう、官が支えなければならない」とする。日本の一市民としても耳を傾けたい内容が含まれる。以下は、寄稿文の内容である。(見出しは訳者が付けた)
■「官冷民温」
このところの韓日関係は1965年の国交正常化以来最悪だ――。そんな言説が両国間にくすぶっている。昨年10月末に韓国大法院が強制動員労働者の問題で日本企業に慰謝料の支払いを命じたのをきっかけに日本の官僚、政治家、学者、メディアが言いだし、それが韓国内にまで広がっているようだ。
確かに政府間に限ってみると悪い。最悪とまでは言わなくとも相当によくないのは事実である。しかしこれを民間や地方自治体にまで広げてみると、これまでとはまったく違った様相もみえてくる。
韓日は、つい何年か前までを言っても、政府間の関係が悪くなると、民間交流も、自治体間の交流も中断してきた。ところが最近は、政府間が冷え込んでも民間レベルは温かい、「官冷民温」といえる新しい現象が起きている。言うところの「韓日関係最悪論」は、そのような潮流を見過ごしている。
■増える人々の往来
韓日間の人の交流は昨年、史上初めて1千万人を超えた。日本から韓国へ295万人、韓国から日本へは754万人である。従来に照らすと、大法院判決があった昨年10月末を起点に韓国を訪れる日本人はぐんと落ち込むのが通例だった。李明博大統領が独島(竹島)を訪れた翌年の2013年から韓国を訪れる日本人が急減したように、である。
しかし今回は逆である。韓国観光公社の統計によると、韓国を訪れた日本人は前年同期と比べ、昨年11月で45%、12月で33.5%それぞれ増えている。ことしに入ってからも5月まで月平均28%ほど増えている。とくに今年3月に訪韓した日本人は37万5119人を数え、1カ月間の訪問者数としては過去最高を記録した。
■コリアタウンに集う日本の若者
大阪の生野区は100年前から在日同胞が密集して暮らす地域だ。一時は区の全人口の4分の1ほどが在日同胞だったそうだ。ここの「御幸(みゆき)通り」と呼ばれる、500メートルほどの区間にあるコリアタウン商店街は道の両側にキムチ、Kポップスターのキャラクター商品、チーズホットドッグやフライドポテト、韓国化粧品、韓国食品などを売る店がずらりと軒を並べている。
日本の10代、20代の若者たちが韓国の味覚や雰囲気を求めて集まってくるおかげで、曜日を問わず通行が困難なほどだ。あふれる客に商店主らはトイレが足りないと悲鳴を上げたりしている。
■高まる韓国語学習熱
先月28日、韓国語教育に力を入れているという大阪市近郊、豊中市内の、ある専門学校を訪ねてみた。ここでは15年前、生徒4人だけで韓国語科をスタートさせた。それが、いまはどうか。全校で7つの専攻科があり、1、2学年とも300人が定員なのだが、1学年は全体の60%、2学年も40%までが韓国語専攻の生徒たちだ。
今年は韓国語志望の10人ほどが施設不足で入学できなかったほどで、韓国語人気は年を追うごとに高まってきているという。かつては韓国語を学ぼうとする生徒は父母を説得するのが大変だったそうだが、いまは、そのような父母はまず、いないというのが学校側の説明だった。
■「政府間が悪いときほど、交流を」
この地域で会った自治体関係者たちも異口同音、「たとえ政府間の関係が悪いとしても……いや、こんな時だからこそ、自治体間の交流をいっそう深めたい」と口をそろえる。
このような現象は明らかに一昔前とは質的に違う新しい流れだ。従来の官僚、政治家、メディア、学者らの目には見えない水面下で、多様な価値観、趣向、文化的好奇心で武装した若者たちが不可逆的な交流を生み出している。その幅はあまりに広く、深く、多様であり、全貌をつかむのも難しい。
■「G20で新しい里程標を」
もちろん、「民が温かいのだから、官はこのまま冷たくてもいい」ということにはならない。むしろ、このような新しい流れがさらに発展するよう、官の側で支えなければならない。
折から今月28~29日、大阪で開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会談に文在寅大統領が出席する。韓国大統領として8年ぶりに訪れる大阪は日本で在日同胞が最も多く暮らす地域である。韓日交流の歴史が最も古く、韓国人観光客が最も多く訪ねてくるところでもある。韓日両政府が両国交流の中心地である、ここ大阪で新しい潮流に沿った、新しい友好協力の里程標を打ち建てることを期待したい。(波佐場 清訳)
韓国の大阪総領事、吳泰奎(オ・テギュ)さん(59)が最近、本国の日刊紙、京郷新聞にこんな寄稿文を載せた。新聞記者出身で、大阪に赴任してきて1年余。いま、主要20カ国・地域(G20)首脳会談を控える大阪から韓国民に発したメッセージである。
https://news.v.daum.net/v/20190620203726432
吳総領事は「民」から「官」に移った自らの立場に引きつけ、「民間の新しい流れがいっそう大きくなるよう、官が支えなければならない」とする。日本の一市民としても耳を傾けたい内容が含まれる。以下は、寄稿文の内容である。(見出しは訳者が付けた)
■「官冷民温」
このところの韓日関係は1965年の国交正常化以来最悪だ――。そんな言説が両国間にくすぶっている。昨年10月末に韓国大法院が強制動員労働者の問題で日本企業に慰謝料の支払いを命じたのをきっかけに日本の官僚、政治家、学者、メディアが言いだし、それが韓国内にまで広がっているようだ。
確かに政府間に限ってみると悪い。最悪とまでは言わなくとも相当によくないのは事実である。しかしこれを民間や地方自治体にまで広げてみると、これまでとはまったく違った様相もみえてくる。
韓日は、つい何年か前までを言っても、政府間の関係が悪くなると、民間交流も、自治体間の交流も中断してきた。ところが最近は、政府間が冷え込んでも民間レベルは温かい、「官冷民温」といえる新しい現象が起きている。言うところの「韓日関係最悪論」は、そのような潮流を見過ごしている。
■増える人々の往来
韓日間の人の交流は昨年、史上初めて1千万人を超えた。日本から韓国へ295万人、韓国から日本へは754万人である。従来に照らすと、大法院判決があった昨年10月末を起点に韓国を訪れる日本人はぐんと落ち込むのが通例だった。李明博大統領が独島(竹島)を訪れた翌年の2013年から韓国を訪れる日本人が急減したように、である。
しかし今回は逆である。韓国観光公社の統計によると、韓国を訪れた日本人は前年同期と比べ、昨年11月で45%、12月で33.5%それぞれ増えている。ことしに入ってからも5月まで月平均28%ほど増えている。とくに今年3月に訪韓した日本人は37万5119人を数え、1カ月間の訪問者数としては過去最高を記録した。
■コリアタウンに集う日本の若者
大阪の生野区は100年前から在日同胞が密集して暮らす地域だ。一時は区の全人口の4分の1ほどが在日同胞だったそうだ。ここの「御幸(みゆき)通り」と呼ばれる、500メートルほどの区間にあるコリアタウン商店街は道の両側にキムチ、Kポップスターのキャラクター商品、チーズホットドッグやフライドポテト、韓国化粧品、韓国食品などを売る店がずらりと軒を並べている。
日本の10代、20代の若者たちが韓国の味覚や雰囲気を求めて集まってくるおかげで、曜日を問わず通行が困難なほどだ。あふれる客に商店主らはトイレが足りないと悲鳴を上げたりしている。
■高まる韓国語学習熱
先月28日、韓国語教育に力を入れているという大阪市近郊、豊中市内の、ある専門学校を訪ねてみた。ここでは15年前、生徒4人だけで韓国語科をスタートさせた。それが、いまはどうか。全校で7つの専攻科があり、1、2学年とも300人が定員なのだが、1学年は全体の60%、2学年も40%までが韓国語専攻の生徒たちだ。
今年は韓国語志望の10人ほどが施設不足で入学できなかったほどで、韓国語人気は年を追うごとに高まってきているという。かつては韓国語を学ぼうとする生徒は父母を説得するのが大変だったそうだが、いまは、そのような父母はまず、いないというのが学校側の説明だった。
■「政府間が悪いときほど、交流を」
この地域で会った自治体関係者たちも異口同音、「たとえ政府間の関係が悪いとしても……いや、こんな時だからこそ、自治体間の交流をいっそう深めたい」と口をそろえる。
このような現象は明らかに一昔前とは質的に違う新しい流れだ。従来の官僚、政治家、メディア、学者らの目には見えない水面下で、多様な価値観、趣向、文化的好奇心で武装した若者たちが不可逆的な交流を生み出している。その幅はあまりに広く、深く、多様であり、全貌をつかむのも難しい。
■「G20で新しい里程標を」
もちろん、「民が温かいのだから、官はこのまま冷たくてもいい」ということにはならない。むしろ、このような新しい流れがさらに発展するよう、官の側で支えなければならない。
折から今月28~29日、大阪で開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会談に文在寅大統領が出席する。韓国大統領として8年ぶりに訪れる大阪は日本で在日同胞が最も多く暮らす地域である。韓日交流の歴史が最も古く、韓国人観光客が最も多く訪ねてくるところでもある。韓日両政府が両国交流の中心地である、ここ大阪で新しい潮流に沿った、新しい友好協力の里程標を打ち建てることを期待したい。(波佐場 清訳)